虚血性心疾患の予防には?
虚血性心疾患は冠動脈硬化のために起こります。これを予防するためには動脈硬化を予防しなければなりません。それには日常生活はどういう形で過ごすのが望ましいのでしょうか?
まず、対象例の年齢、性別、身長・体重・腹囲など、喫煙、飲酒などの生活習慣、そして、血圧などの管理の対象となる検査数値の面から望ましい形を考え、食事、運動、知的活動のそれぞれのあり方を考えてみましょう。
第一は生活習慣の現状と管理目標とする数値です。
血圧は140/90mmHg未満を維持するようにします。高齢者の場合には150~160/90mmHg未満とします。血圧は朝(朝食前)だけではなく、ときには夕方あるいは就寝前にも測定してみます。夜になると血圧が上昇する夜間高血圧という場合があるからです。
健康診断などでの血液生化学検査では、総コレステロールは240 mg/dl未満、LDLコレステロールは140 未満、HDLコレステロールは40 以上、トリグリセライドは150 未満が目標です。血糖は125 以下、ヘモグロビンA1cは6.5%未満が青信号です。尿酸 7.2 以下、クレアチニン 1.2以下も確かめておきましょう。
また、服用している薬の内容を確認してください。
肥り過ぎがいけないのですが、痩せ過ぎもいけないといわれています。身長と体重からBMI(body mass index)を計算します。BMIは「体重(キログラム)÷身長(メートル)÷身長(メートル)」で計算します。身長167 cm、体重 67 kgであれば、67 ÷(1.67×1.67)=24 です。22であれば標準体重であるということができ、25を越えると肥満です。腹囲については男性85 cm以上、女性では90 cm以上を腹部肥満とします。
メタボリック症候群というのは腹部肥満がまずあって、脂質異常、血圧高値、高血糖の3項目のうち2項目以上ある場合をいいます。すなわち、腹部肥満がある場合、それぞれの検査値が基準値以下でも高めであれば動脈硬化が進行して虚血性心疾患を発症しやすいという疫学に基づく症候群です。
さらに、喫煙していれば、禁煙しなければなりません。
アルコールは飲み過ぎないようにしましょう。一日に飲む量の目安としては、それぞれ、ビール(度数5 %)500 mlまで、清酒(12.5 %)一合まで、焼酎(25 %)100 mlまで、ウイスキー(40 %,)ダブルで一杯以下です。
睡眠時間は8時間をぐっすり休むこと。快食、快眠、快便が基本です。
第二は食事のカロリーです。摂取カロリー数の推定には80 kcalを1単位とする糖尿病食品交換表が便利です。80 kcalというのは鶏卵1個が該当します。ファミリー・レストランのメニューにもカロリーや塩分量が表示されるようになりました。
適正なカロリー量はBMIを22 とする「標準体重×30」です。つまり、「身長(メートル)×身長(メートル)×22×30」と計算されます。身長 167 cmの例ならば、1840 kcal です。
第三は、食事の内容です。高血圧があれば、食塩制限が大事です。レストランのメニューの表には使用されている食塩含量も記載されるようになっています。注意してご覧ください。摂取食塩量の推定のためには、夜間尿による食塩排泄量計量計を用いることもできます。
日本高血圧学会では食塩摂取量は高血圧の人では一日6 g 未満を目標としています。高血圧がない人の場合、厚生労働省の健康日本21では、一日、男性で9 g 未満、女性で7.5 g未満を目標としています。成人の食塩必要量は一日1.5 gであり、ここまで減らしても差し支えないといわれます。日本心臓財団では、すべての人に一日6 g 未満を目標にすることを推奨しています。塩分の排出を促す食事もよいようです。りんご、大豆製品、いも類、海藻類などがお勧めです。
野菜はたっぷり一日350 gが適当とされています。野菜の抗酸化成分は老化を進行させる活性酸素を無害化するといいます。野菜を最初に食べることで満足感を得ておくと肥満の解消にも役立つといいます。脂肪分、つまり飽和脂肪酸が多いものを控えるのがよく、肉ならば、脂肪の少ない赤身の肉がよいのです。おすすめは魚と大豆です。これらの他に摂ることをお勧めするものにはカルシウム、マグネシウム、植物繊維に富んだ食品があります。魚、豆類のほか、いも類、野菜、そして果物、牛乳などです。
高尿酸血症も注目されています。高尿酸血症はCKDを進行させ、虚血性心疾患にも影響するといわれますので、クレアチニンが高く、いわゆるCKDがある人などでは、これに対処しておくことも必要でしょう。
第四は運動です。歩くだけならば、誰にでもできます。若い人ならば、一日六千歩から一万歩くらいを目標に歩いてください。
歩くことには運動筋の萎縮を予防、平衡感覚を維持して転倒を予防する、という効用がありますが、エネルギー消費という効用も期待されています。普通の速さで歩くと、六千歩で200キロカロリーが消費されます。少し速めに、脈が速くなる程度には歩くことが望ましいといいます。 これらの疾患は、高血圧や高脂血症による動脈硬化から進展することが多いため、生活習慣病の一つとして、生活習慣の改善による予防が重要視されています。(日本心臓財団抜粋)
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